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ヒロ杉山×川上鉄太郎、六本木とアートを語る。

By重信綾

写真 byMidori Kondo

2018.06.27, 3:49 PM

 

川上:杉山さん、六本木ヒルズで個展をされていましたよね。自由ということをテーマにされていましたが。

 

杉山:自分のなかで「こうあるべき」とか、みんなが期待している僕というのを勝手に作り込んでしまっていたような気がして、それを一掃し、純粋に絵を描こうと思ったんです。画材も馴れたものではなく初めてのものを使いたくて、1年前に108色のホルベインを買って水彩で描きました。絵の具を水で溶いてにじませるのでコントロールがうまくいかなかったりするんですけど、それもよしとして。モチーフを決めるより先に手が動くこともあって面白かったです。

 

川上:窮屈さみたいなものを感じていたのですか?

 

杉山:窮屈ではないんだけど、今、大学で教えていて卒制のゼミを担当しているんですね。卒展に向けて一緒に作品を作って行くんですけど、学生たちは縛られていない分、発想が自由。「え?」っていうくらい自由なときもあって、それに感化されたのかな。自分も昔は自由だったなと思ったりして…。

 

川上:生徒からのフィードバックがあるというのは、いい体験ですよね。そう、自分の本能にしたがうことは、絵を描くときもそうですが、街歩きでも大切なことですよね。

 

杉山:自分でも仕上がりがわからないまま描くということをやって、もちろん上手くいかないこともあるんですけど、上手くいったときにはものすごくいい絵になる。それは、目的を決めずに街を散歩しているときに、思わずいい店を見つける感覚と近いものがあるかもしれません。今は海外に行くときでも、事前に調べて目的地を持って行くからね。情報がなかった昔は、すごく美味しいお店に入ったり逆にハズしたりして、それがまたいい思い出になったりするんだけど。今は失敗しなくなった分、時間が有効に使えるのかもしれないけど、情報にコントロールされている部分は大きいと思います。

 

川上:六本木がアートの街になるためには、日本のアーティストがちゃんと育つことも大事だと思います。以前、「なぜ日本ではアートマーケットが広がらないんだろう」という話を杉山さんとしてから、そのテーマに興味を持ち始めたんですけど。アートを億で買う人って、ビジネスマンが多いじゃないですか。だから、アートとビジネスには通じるところがあると思っているんです。なんで、ZOZOTOWNの社長を目指す人はいるのに、ZOZOTOWNの社長みたいに億単位でアートを買おうと思う人が少ないのか、すごく不思議ですよ。それは、教育とか伝え方の問題が大きいのかなと思っています。

 

杉山:絵を買うときには、この絵が自分にとってどのくらいの価値があるのかということを自分で判断しなきゃいけない。500万円を出すというのは、自分で500万円の価値があると判断することですよね。でも、日本人はその価値判断ができない人が多い。15万円のブランドバッグを買うOLさんはいても、15万円の絵を買う人は数数数パーセントしかない。それは教育だと思いますよ。海外では「この絵をどう感じるか」というディスカッションが行われているけど、日本では「何が自分にとっていいのか」「何を感じ取ったか」といえないことが、一番の問題かな。

 

川上:大学のプログラムにそういうものはないんですか?

 

杉山:全然ないね。僕、ドイツのボンにある美術館に、大好きなシグマール・ポルケというアーティストの作品を観にいったことがあるんですけど。難しい抽象的な絵の前に幼稚園くらいの子たちが座って、その絵に対して何だかんだ言っているのを見たときに、これはかなわないなって思った。あの年齢から一流の作品を見て、ディスカッションしている光景が僕にとってはショッキングでした。

 

川上:本当に教育が違いますね。僕も、最近やっと絵を買えるようになりました。

 

杉山:買い始めるとクセになるからね(笑)。でも、どんどん買ってください。買うということは、その分がアーティストに入るというわけだから。それまでバイトしていた時間を制作に使えるようになって、スキルがあがっていくんです。

 

Enlightenment ヒロ杉山 Chicabi 川上鉄太郎

 

川上:若手のアーティストたちにお金の稼ぎ方を教えることも大事そうですね。

 

杉山:いや、本当に大事なことですよ。今、美大の子の多くは就職するんです。昔は半分くらいで、もう半分はフリーランスになっていたんですけどね。だから大学の授業では絵を描くだけじゃなく、フリーランスになった人がどうすれば収入が増えて行くのか、そういうことを教える時間が必要だと思うんです。

 

川上:そういうこと、やりたいですね。お金を稼ぐことって人として必要なことだから。

 

杉山:アーティストも職業だからね。ある程度の仕組みを学べば、よっぽど才能がない限り、食べてはいけると思うんだ。そこから突き抜けるかどうかは、また別の話だけど。

 

川上:「-YORAKU-夜楽-」で開講できたらいいですね。

 

杉山:考えましょう。あと、僕は「-YORAKU-夜楽-」の1つの役割として、海外の人にとってのガイド的なものになると面白いなと思うんです。「-YORAKU-夜楽-」さえ見れば、その日一日の予定が決められて楽しめるような。買い物をして、美術館を見て、食事をして、最後に飲むという全部が詰まっているといいですよね。六本木は海外から初めて来る人にとっては聞き馴れない場所だから、そういう人たちがきて安心して遊べるメディアになれるといいですよね。

 

川上:伝統と新進気鋭という2つの魅力を持つ街の情報を、発信していきたいです。

 

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