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中央線ナルシシズムと流動性について

By北川圭

2018.05.15, 5:32 PM

KAWA

 

年々、気候や気圧の変化に弱くなってきている気がする。あるいは、年々、気候や気圧の変化が激しくなっているのかもしれないと思う。

 

ギャラリー・ペロタンでやっていたKAWSの個展について友人に聞くと、中央線ナルシシズムの話になった。彼は中学生のころからKAWSを敬愛していた。その新作を見てきたところから、話がそうなっていった。

 

KAWSの個展は、終わってしまったのだけど、とてもよかった。美術手帖Webの記事を見ると、氏は自分の作品について「流動性」ということしか言わない、という。

KAWSが語る「KAWS」文・大坂紘一郎 氏 |美術手帖

作家は日本語は話さないだろうから、Liquidityと言ったのだろうか。この言葉の方が、流れている感じがする。 ゆく河の流れは絶えずして・・・という、よく引用されるそのLiquidityだろうか。あるいは、これは検索すると経済学の言葉としても出てくる、つまり市場価値が交換されやすいその度合いとしての。流れるということが抽象的な意味合いになってくる。しかしもともと流れるということは抽象的なイメージでもある。今窓の外は雨が降り、ガラスにひたひたと水滴が流れている。それを見ているだけでも。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。 世の中にある人とすみかと、またかくのごとしと、過去の人が既に言っている。

 

KAWSのそれは、そんな大きな流動するものの、断片のように感じられる。友人と話している間にも、スクエアの赤い画や、長大な大作、仕事の合い間にスタスタと見ておぼえた印象が断片になって心のなかに浮いては消える。知っているものが登場する喜びもそこにあると彼は言ったが、そういうこともある。KAWSが描いてきた様々なキャラクターや色彩の断片が、無機質に、登場している。それはそのまま氏がなぞってきたポップカルチャーのヴィジュアルでもある。そこにかぶせられる、あのバッテンの目。目というもの自体も、誰にも共通する感覚としてある。目があるだけで懐かしい。あのバッテンの目を日頃街で目にしていたら印象も異なるのだろう。

 

またひいて絵に戻ると、フラットで明瞭な像なのに、意味合いが一目に分からないから、印象ばかりが心に刻まれる。画像で見たら分からないかもしれないが、これは絵具じゃないと描けないものだろう。ファジーなグルーヴが響く。画面に留まらず、世界が広がっている気がする。そうあまねく都市に広がっている。男と女がいるということにも似て。

 

 

さて、中央線ナルシシズムとは何なのか。なぜそういう話になったのか。話したのが中野だったからだろうか。思えば彼には元々、中央線へのほのかな反発心があった。自分の居場所に固執し、いくつになってもロックンロール。週末は行きつけの大将の店で飲んだくれて、時に友人のブルースバーでウイスキーをすする。その傍らで町内づきあい。夏は盆踊り。その街中で、一生を終える。適度に文化的、適度に友だちがいて自足、SNSはやらない。それは彼によると、すくいようのない、俗物化したカウンターカルチャーであり、サブカルクソ野郎の温床だという。

 

サブカルチャーとはそもそも、メインカルチャーに対するカウンターカルチャーとして出来た言葉、そこに、ある種、反芸術という意味合いもあった。時代に合わせて、異なる意味合いをもって、流行した言葉なのだろう。本屋にサブカルチャーという棚もあり、人はサブカルクソ野郎と呼ばれたりもする。

 

なぜかしら中央線には、六本木よりたしかにそういう傾向の人は多いのかもしれない。六本木では青山ブックセンターも閉まるという。六本木の人たちはそれをどう見つめるのか。けれど人にはどちらもあるだろう。六本木に住んで高円寺で働く人もいるだろうし、高円寺に住んで六本木に働く人もいる。それこそもっとハイでドープな何かしらも、この街にはあるだろう。あちらの街にも。

 

 

インタビューに応えるKAWSの姿は、それこそ、サブカルクソ野郎っぽくもあるけれど、もっと、職人然と飄々とした何かに感じられた。

 

 

・・・KAWSについて知りたい方は検索するといいと思います。

 

 

April 13, 2018 from Instagram @d0nchi

d0nchi “April 13, 2018” from Instagram @d0nchi

 

北川圭

ライター。同人誌「ぬぬけ」などもやる。音楽についてブログを書く。
http://howlmag.blogspot.jp/

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