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アートの横道 (1)―リンゴの所在

By北川圭

カラー写真 by阿部隆大

2018.03.01, 10:37 PM

“truth” 2005 oil on FRP, panel, signature on base private collection scale 1/1

 

広尾から西麻布に至る、リンゴに会う

有栖川宮記念公園  池

 

Kaikai Kiki Gallery  入口

 

夜の話をしているけれど、たまには昼もいいんじゃないかと思った。ある2月の土曜、昼は春の日のような荒れ模様だった。

 

アートの展示を見ようと、私は六本木へ歩いた。

 

はじめは広尾に降り、六本木方面の出口をでて上り坂にいたるところ、坂に沿うた有栖川宮記念公園を通る。天気雨の羽を乾かす鳥、池の周りに憩う親子、小さな竿で釣り糸を垂らす人たちを見る。この町は裕福な町だけど、お金持ちが集まったというより、最初からお金持ちや要人が集まるべくして集まって、出来るべくしてこのように出来たという感じで、いやらしさがない。映画のようにゆったりしている。

 

公園を出て少し歩くと、どちらかというと裕福なお家の子どもたちが通う麻布学園、そのお隣ビルの地下には、村上隆の主宰するカイカイキキによるKaikai Kiki Galleryがある。奈良美智が30年分のドローイングを集めた展覧会をしている(8日まで)。きめ細やかな展観。80年代末、初期の水彩にはじまり、延々と描き続けられる人のかたち。女の子。見ていると、近年の鉛筆画に惹かれる。何か、彫刻的なイメージもあるのだろうか。鉛筆でこちょこちょっと記された頬の陰影が、とてもいい。どこか寂しい。画家は朝な夕な一人で描き続ける。それを30年間とは凄い月日だ。しかし賑わっている。海外からの旅行者も多そうだ。

 

雨宮庸介 “Apple(black & white)” 2012-2018 oil painting on wood, plastic 1/1 scale

 

雨宮庸介 “併走論” charcoal, paper, fixative 各78×106cm 制作年は2012年から2017年に至る

 

(共に展示風景 / 雨宮庸介 個展「Ring Me Twice」(2018) @SNOW Contemporary より)

 

坂を下り、広尾駅からまっすぐはしる外苑西通りを歩いて。このあたりから六本木か、いやまだ六本木ではない。かわらず道はゆったりしている。

 

西麻布の交差点、信号を渡った先ビルの4階に SNOW Contemporary がある。本格派のペインターからストリートアー トの作家まで、エッジーなアーティストを幅広く扱うギャラリーで、一昨年にこちらに移転をした。道なりに普通に行くとつい階段を上がるけれど、ちょっと大変だから、ビルの裏手にまわって エレベーターに乗る。

 

雨宮庸介(1975年茨城出身、在ドイツ)という方が個展をしている。雨宮陽介「Ring Me Twice」2/7~3/10。大理石のような台の上に一個のリンゴがある。リンゴの背には少し緑や青の絵具がペタリとついている。私はリンゴにあまり縁がない。けれど。アーティストの身になれば、リンゴというのは古来より名だたるモチーフであり、デッサンの勉強にもよく現れた。画学生に聞くと、リンゴほど個々の差が現れるものはない。ゴツゴツした質感や表面の艶。トップの枝のつき方。それら全てに個性が出ている気がします、という。

 

それで、これは、実物大の立体で、素材は明記されていないけれどキレイな、リンゴらしいリンゴだ。ギャラリーだから作品だろうけど、もしかしたら本物かもしれないと思う。つい、間違い探しをしようとしてしまう。けれど純然たるリンゴとしか感じられない。絵具がついているから、オブジェのようにも感じられる。でも、リンゴって既にオブジェ感があるものだし、ようするに〝リンゴのようなもの〟が置かれているのを見た、ということなのだろう。

 

奥の間にはモノクロームのリンゴもあった。そちらの方が美的には面白いなと感じた。分りやすいウソだからなのだろうか。

 

そうして、リンゴと向い合う壁にあった、額装された大判の木炭デッサンに惹かれる。ぬらりとした筆跡が色っぽく、抽象画の断片みたいで何が描かれているかは分からないのだけれど、心地よい動きがある。ギャラリーの方によると、これは322.5枚×3章で構成される大きな絵の一部なのだという。彼は今、国立新美術館DOMANI・明日展でも出品していて、会期中、美術館に滞在して、公開練習/公開制作をしているから、見てくることをおすすめしたいという。じゃあ見てこようと思う。

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北川圭

ライター。同人誌「ぬぬけ」などもやる。音楽についてブログを書く。
http://howlmag.blogspot.jp/

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