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土地の記憶の旅

By高木めぐみ

2018.05.31, 10:09 AM

土地には、そこで生きてきた人の人生の記録がつまっている。

人生の記録が土地の記憶となり、現在にいたるまで繋がっている。

「地理はカルチャーである」と、一緒に飲んでいた友人が言っていた。

いま自分が立っている土地が、誰かの人生の積み重ねの上でできていると思うと、ありがとうございますという気持ちになる。

 

六本木が今のような大都会になる前、もともとどういう町だったのか、そこにはどんな人の人生があったか知りたくなって、60年代~90年代の住宅地図を手に入れた。

住宅地図とは、一軒ごとの建物の名称、居住者名が掲載されている、個人情報の塊のような地図である。

60~70年代のものなどは、丁寧な手描きで作られている。

そこには、Googleストリートビューでは知り得ない土地の記憶が散らばっている。

 

眺めていると、今でいう六本木ヒルズのあたりに、池のようなものが何個かあるのを見つけた。

六本木に池のイメージはないな…と不思議に思って調べてみると、六本木と水の物語がいくつか見えてくる。

 

昔々、現在六本木ヒルズの住宅があるあたりの一帯は窪地で、湧き水による池がいくつかあり、江戸時代からその池を利用した金魚養殖があったそう。

ヒルズの再開発間際まで天保の時代から続いていた金魚屋さんがあり、その店主は後に六本木ヒルズの自治会会長をつとめられていたそうだ。

都市の象徴でもあるヒルズの土地に、古くから続く金魚屋さんが最近まであったとは驚く。

 

また、地図では、同じくヒルズがあったあたりに元々ニッカウヰスキー工場があったのがわかる。

ここでは、工場を稼働しはじめた頃、地下からくみ上げられる水をブレンドに使うこともあったそう。ここの土地には、それだけきれいな湧き水があったということ。

 

そして、地図を眺めていると「麻布十番温泉」の文字も。

2008年に閉店してしまったが、東京都内にある数少ない温泉として有名だったそう。

ここでは地下500mから温泉をくみ上げて使っていたとのこと。

六本木に水のイメージがなかったので、湧き水にまつわるこれらの事実には驚いた。

 

これだけ豊富なエピソードが残っている六本木の湧き水に、今も触れられる場所はないのだろうか?

 

調べてみると、善福寺(元麻布一丁目)にある「柳の井戸」という場所は、今も湧き水があるとのことで実際にいってみた。

 

柳の井戸

 

 

昔からここにあるんだろうな、という堂々とした柳の木。

隣にはたしかに透明な湧き水が!

 

 

地下水

 

 

立て看板から、この水が空襲や震災の際に、地元の人達の生活を救っていた歴史があるのがわかる。

 

善福寺の住職さんにこの湧き水について尋ねると、

「昔戦争のときは使っていたって聞いてますけどね。

今は使わないよ。今は、ただただ湧き続けてるだけ。」

と、言っていた。

 

住職さんから、井戸の水をそのまま飲まない方がいいと言われた。

とてもきれいに見えるのに残念。

飲める場所はないのかと探していたら、

この井戸と同じ源泉の湧き水を使用したコーヒーが飲めるカフェを、麻布に発見。

 

 

cafe kariz

 

cafe kariz」(カフェカリーズ)

テレビでも何度か紹介されたことがある有名店のよう。店内では、湧き水をくみ上げろ過している場所も見れる。店主さんがコーヒーを運びながら話をしてくれた。

 

 

cafe kariz

 

「六本木に限らず、東京は掘れば地下水がでてくるんですよ。このあたりはたまたま10mなど浅いところに地下水が通っていて、昔は井戸を持っているのが当たり前だった。でもみんなが使うと地盤沈下を起こしてしまいますので、他の地域と同じように水道が普及していきました。

このカフェカリーズがある土地は、元々お屋敷の敷地の一部でした。家を建て直す時に、古くからあった井戸を埋めました。でも工事を進めていたら、他の場所からまた湧き水が出てきて。」

 

再び湧き出てきてしまった水を埋めるのがもったいないと感じた店主さんは、この地下水を使ってカフェを営むことを決意したそう。

 

店主さんはそのまま、このあたりの水にまつわる土地の記憶を話してくれた。

大きな高層ビルが増えたことによって、骨組みで地下を流れる湧き水が分断され、昔より水量が少なくなっていること。湧き水を使うための細かい基準が保健所によって設けられているが、昔より下水設備が整ってる分、湧き水はきれいになっているんじゃないかと予想していること。この湧き水が、東京のどの森から流れてくるかということ。麻布には何故大使館が多いのか等、歴史的なことも。

 

気づいたら、一時間も聞き入っていた。

 

この日は雨がとても強く降っていて、店内から見える地下水も、時間が経つとあふれてくるということだった。

私は雨が降れば傘をさすだけだけど、カリーズの店主さんは水と一緒に生きている。

 

 

cafe kariz コーヒー

 

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